煮干し
煮干し(にぼし)
最近では、昔のように煮干しが食卓にのぼることも少なくなったのではないでしょうか?
実は、煮干しは現代人に不足しがちな栄養素を摂取するのに非常に適した食品なのです。
そこで、煮干しの持つ優れた成分と、その効能についてご紹介します。
煮干しについて
私たちが一般に「煮干し」と呼んでいるのは、主にカタクチイワシやマイワシの稚魚を原料としています。
煮干しよりもさらに小さい稚魚はシラスになります。
かたくちいわし(成魚)
まいわし(成魚)
煮干しの歴史
イワシは古くから食べられてきましたが、加工して食べるようになったのは奈良時代前とされています。
大衆魚として庶民の間に広まった魚ですが、実はあの「紫式部」もイワシが大好物で、宮中でこっそり食べていたそうです。
ちなみに、宮中の言葉で『御紫(おんむらさき)』または『御細(おほそ)』とは、イワシのこと。
イワシは今でも非常にポピュラーな魚として親しまれています。
煮干しの栄養素
煮干しに含まれる豊富な栄養素として、カルシウムをはじめとする様々なミネラルがあります。
さらに煮干しには、血液をきれいにすることで知られるDHA、EPAなどの不飽和脂肪酸も豊富に含まれています。
ミネラル
ミネラルは、体に必要な量はごくわずかですが、身体の機能をコントロールする上で欠かすことのできない栄養素です。
特に、身体の成長や維持に欠かせないミネラルを必須ミネラルといいます。
煮干しには、カルシウムをはじめとして、現代人に不足しがちな必須ミネラルが豊富に含まれています。
カルシウム(Ca)
カルシウムと言えば、骨や歯を作る、心を落ち着かせるなどの効果がよく知られています。そのほかにも、重要な効果があります。
- 神経の情報伝達
- 筋肉の収縮
- ホルモンや免疫抗体の合成
- 受精、分娩
カルシウムの重要な効果
カルシウムは、私たちの体が正しい生命活動を行うために無くてはならないものです。
特に、煮干しのカルシウム含量は、牛乳の約20倍であり、数ある食品の中でも群を抜いています。
カルシウムの吸収を促進するカゼインが豊富な低温殺菌牛乳とあわせて摂れば、とても優秀なカルシウム補給源となります。
鉄(Fe)
鉄分は日本人が不足しやすい栄養素の一つです。
鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血になります。貧血になるとからだが重い、息がきれる、顔色が悪い、疲れやすいと感じるようになります。また、思考力の低下などを引き起こします。
亜鉛(Zn)
亜鉛は体内に約2000mg存在し、主に骨格筋・骨・皮膚・肝臓・脳・腎臓などにある成分です。タンパク質の合成に関わる酵素の材料として使われます。
人間の体に必要とされている必須ミネラル16種に含まれますが体内で作り出すことができないため、食事から摂取する必要があります。
亜鉛は、新陳代謝やエネルギー代謝、免疫反応など、体内のさまざまな働きをサポートして正常に保つ役目を持っています。
亜鉛不足は、免疫機能の低下や皮膚炎、味覚障害などを招きます。
不飽和脂肪酸
肉類の脂肪と魚介類の脂肪では構造的に違いがあり、魚介類の脂肪は体内に摂取すると様々な病気の予防に働きます。
【飽和脂肪酸】
常温で固まる性質を持ちます。摂り過ぎると中性脂肪やコレステロールが増え、高脂血症や動脈硬化が進むおそれがあると言われています。
バター、ラード、牛脂などに多く含まれています。
【不飽和脂肪酸】
常温で固まりにくい性質を持ちます。体内では液体の状態です。特によく知られているのが、血液をきれいにする作用で、血中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがあると言われています。
マグロ、イワシ、サンマ、オリーブ油、ゴマ油、シソ油、グレープシード油などに多く含まれています。
【主な不飽和脂肪酸の種類】
EPA(エイコサペンタエン酸)
動脈硬化や心筋梗塞を防ぐ働きがある。
DHA(ドコサヘキサエン酸)
血液中の脂質を低下、血糖の低下、抗血栓作用、また、記憶力の増強などがある。
※これらの成分は、特に青魚に多く含まれることが知られています。
ビタミンD
ビタミンDは、低温殺菌牛乳のカゼインと同様に、カルシウムの吸収をよくする働きをもっています。また、カルシウムの骨への沈着も促進します。
ビタミンDは、太陽(紫外線)にあたることによって生成されるので、特に天日乾燥の煮干しにはビタミンDが豊富に含まれています。
煮干しの製造について
新鮮なうちに、さっと塩水で煮てから干します。「煮る」そして、「干す」ので煮干しです。
煮干しの乾燥法には、天日乾燥や機械乾燥などがあります。
「天日乾燥」の煮干し
天日乾燥の煮干しのほうが、乾燥機を使った煮干しに比べて、「アミノ酸」「核酸」「有機酸」「香気物質」などのいわゆる旨味となる成分が多く含まれます。
これは、天日で日数をかけて乾燥させている間に、微生物の作用によってイワシの細胞が徐々に分解し、豊富なアミノ酸、核酸が生成されるためです。
アミノ酸はタンパク質、核酸はDNAを構成する物質ですので、体の細胞を造るのに欠かせない成分です。また、紫外線を受けることによってビタミンDも生成されます。
しかし、現在では、残念ながら大量生産のための機械乾燥が主流で、昔ながらの天日乾燥で作られている煮干しは少なく、入手困難です。
スーパーや乾物店で販売している機械乾燥の普通の煮干しでも、十分にカルシウムやミネラルの摂取は可能です。
お召し上がり目安
1日の食べる量の目安は、15gです。これは、小イワシの煮干しだと、20から30匹。粉末であれば、大さじ1杯強です。もちろんこれ以上召し上がっていただいても構いません。
煮干しが食べにくい方は、ミキサーで粉末にして、味噌汁やご飯にふりかけてお召し上がりください。最近では、「食べる煮干し」なども売られています。
カゼインの豊富な低温殺菌牛乳とあわせて食べれば、さらにカルシウム吸収力がアップします。
煮干しがどうしても食べられない方は、缶詰のオイルサーディンや、鯖や鮭でも結構です。
煮干し
煮干し粉
煮干のミニレシピ
煮干しの南蛮漬け
小アジなどの小魚を揚げて、酢に漬けこむ南蛮漬は、日持ちもするし美味しいですね。
今回は、煮干しで簡単に南蛮漬を作ってみましょう。
煮干しからだしが出るので、美味しいですよ。
材料
酢
大さじ3
醤油
大さじ2
みりん
大さじ1
砂糖
大さじ1
唐辛子
お好みで
煮干し
30g
作り方
煮干しを油でさっと揚げます。
油をよく切って、南蛮酢につけます
お好みで玉ねぎスライスなどを入れても美味しいですよ。すぐに作れるのでおつまみにも最適です。