壮快2012年10月号
25年に渡る私の臨床経験からいえるのは、「重度の歯周病でも、約8割の患者さんが、残っている歯の約8割を残せる」ということです。もちろん、それには、基本のブラッシングを確実に行うことが大前提です。歯周病は、3ヵ月単位でどんどん悪化していくので、早く治療することが肝心です。歯を指で軽く揺すってグラグラ動く程度なら、その歯は残せます。しかし、指で上から押して、たとえ1_程度でも沈み込む歯は、根の先まで骨の支えがないので、残せません。歯周病の治療では、できる限り歯茎を切らないのが基本です。歯肉表面にチップを当てヒートショックプロテイン(熱の負荷で生まれるたんぱく質)作用で患部を活性化する「レーザー治療」と、歯周ポケットに通電して消毒と洗浄を行う「高周波通電治療」を行います。患者さんの要望が多いインプラント(人工歯根)については、私は最後の手段と考えています。当院のインプラント治療では、一切歯茎を切開しません。痛みや腫れは非常に少なく、その日に仮歯を入れるので、柔らかい食事も可能です。インプラントが可能かどうかの診断や、予後の状態の精査などに使っているのが、世界でいちばん普及率の高いフランス・トロフィー社のCT(コンピュータ断層撮影)です。このCTを使うと、顔面・骨・頸椎を広い視野で全方向から撮影できます。撮影にかかる時間はわずか11秒、立体的な3D画像、骨を輪切りにした画像で観察できるので、患者さんからも「とてもわかりやすい」と好評です。今回は、歯科の専門家として、微生物酵素をとることで変化する骨密度を、CT画像からご紹介します。微生物酵素は、微生物自身が作り出す天然のビタミン、ミネラル、ホルモン、アミノ酸、核酸、補酵素などの生理活性物質と、微生物由来の糖脂質を含んでいます。食べ物を熟成発酵させた酵素ではありません。開発者の戸田順博氏が取り組んできた土や水を浄化する仕組みを、人間の体にも応用したものです。その薬理効果に関しては、免疫力の上昇、炎症の抑制、疲労や痛みの軽減に働きかけることがわかっています(東北薬科大学・石川正明教授の基礎研究)。骨密度を上昇させる機序は不明ですが、その変化をハンスフィールド値
が示しています。ハンスフィールド値とは、歯の周囲の骨の幅、硬さ、吸収、骨密度を表したものです。骨の外側の皮質骨は、外からの力で簡単に折れないようになっているので、高い値を示します。骨の内側の海綿骨は軟らかく、低い値になるのが一般的です。骨の内部に水がある場合はゼロを示しますが、脂肪の多い人では、脂肪が浮いてゼロより低いマイナス値、脂肪髄を示します。そういう患者さんでも、人工骨をつめて固め、造骨すれば、植立(インプラントを顎骨に埋め立てること)は可能です。理想的には、微生物酵素を植立の約3ヵ月前からとると、骨密度を表すハンスフィールド値が上昇し、歯茎の締まりがよくなります。それにより、造骨をしなくてもすむ可能性があり、かかる費用を軽減できます。植立後は、上顎の骨がつくまでの最低約6ヵ月間、微生物酵素をとることをお勧めしています。総合的に骨を作り管理するためには、炎症を起こしづらく、インプラントの周囲にがっちりと骨をつけて丈夫にする、微生物酵素が必要だからです。ところで、舌ガンと診断され、微生物酵素をとり続けている方がいます。免疫力のバックアップとして考えられたのでしょう。ガンが一歩手前の状態に退いたり、腫瘍マーカーが減少したりしたケースも見受けられるようです。微生物酵素にどこまでの働きがあるかはわかりませんが、ビタミンやミネラル系統で補えない何かほかの要素があるのではないか、腸内細菌が定着する土壌を微生物酵素が作って全身の免疫力を高めているのではないか、と思えてなりません。